クラウド コンピューティングは、持ち家に対する賃貸、自宅の金庫に対する貸金庫に例えられます。
それぞれ、善し悪しがあり、一概にどちらが良いとか優れていることはありません。当然、考え方や状況に応じて選択は異なります。
持ち家と賃貸を比較して考えてみましょう。
持ち家は、自分の理想に近い住宅を手に入れることができます。その代り、多額の頭金が必要ですし、今すぐ必要がなくても、将来家族が増えることを見込んで部屋も多めに用意しておくのも普通でしょう。また、メンテナンスも自分で行う必要があります。
一方、賃貸は永住することは前提とせず、現在のライフスタイルに適した住宅を選択し、使用する分だけコストを払えばそれで済みます。メンテナンスは大家さんが行いますから、例えば雨漏りの修繕など予期せぬ支出が発生することはありません。
例えて言えば、クラウド コンピューティングは賃貸住宅のようなものです。現在の事業規模に合わせて選択し、使った分だけコストを支払います。ただし、賃貸住宅と違うところが1つあります。それは、賃貸住宅は家族が増えたからといって1部屋増やすことができず、引っ越すしかありません。
しかし、クラウド コンピューティングは引っ越すことなく、拡張が簡単にできます。
次は、自宅の金庫と銀行の貸金庫を例にしてみましょう。
自宅の金庫に保管したお金は出し入れが自由です。その代り、泥棒に入られないよう、自宅の施錠はもとより、万が一に備えて警備保障会社を利用することも検討が必要でしょう。
銀行の貸金庫はセキュリティは万全です。まず心配は無用でしょう。他の顧客の金庫と一緒に守られていますから警備費用も按分したものとなります。
クラウド コンピューティングはまさに銀行の貸金庫です。コストを抑えながらセキュリティレベルを高めることができます。データは貸金庫にあたるデータセンター内に保管されます。データセンターへの入館は特定の人しか許可されません。生体認証を用い、サーバーへのアクセスも承認を必要とするなど安全が最優先されます。
さらに、万が一悪意を持った人がサーバーにアクセスすることを前提に、データを暗号化したり分けて保管するなどし、容易には盗まれないよう、高い技術が用いられています。
さて、ここまで見てきて、現在のように変化が激しく、先の読みにくい時代においてはクラウド コンピューティングの優位性が高いように思われたかもしれません。
だからといってすべてをクラウドに移行させるという必要性はないでしょう。
他社にはない自社の優位性は自前のシステムを使い、自社の優位性に直結しないITシステムはクラウド コンピューティングを利用できることがもっとも効率的です。
また、従業員の働き方も多様化しています。働かされるのではなく自主的に働けるようなITシステムとしてクラウド コンピューティングは注目を集めています。
クラウド コンピューティングを使えば、働く場所は問いません。自宅、喫茶店、ホテルなどどこにいても会社と同じ仕事ができるようになります。それはまた働く時間も問わないことを意味します。
大げさではなく、世界中の人が御社で働く機会を得ることができるようになります。運用上の懸念をクリアできれば、経営資源としての人材の飛躍的な効率化が実現できる可能性があります。